
土地をお持ちの方のもとに、ある日こんな提案が舞い込むことがあります。
「ご自宅の隣にアパートを建てれば、毎月安定した家賃収入が得られますよ」
「老後も安心ですし、ローンの返済より家賃の方が多くなりますよ」
こうした“アパート建築提案”は、大手ハウスメーカーや地元工務店からよくある話です。
でも、その場の雰囲気や収入のイメージだけで話を進めてしまうと、後になって「こんなはずじゃなかった…」と後悔するケースも少なくありません。
アパート経営は、一度始めたら途中でやめるのが難しい長期戦。
収支の見通し、借入とのバランス、将来の管理や相続まで見据えた判断が求められます。
今回は、そんなアパート建築の提案を受けたときに、返事をする前に確認しておきたい「建てる前の5つの視点+法的チェックポイント」を、具体例を交えてご紹介します。
🏚「建てて後悔」するケースも
相談を受けていると、こうした声を耳にすることがあります。
- 想定より空室が多く、ローンの返済がきつい
- 家賃は入ってくるものの、修繕費や税金で手元に残らない
- 築年数が経つと売却も難しくなり、出口が見えない
- 相続した子どもが「管理できない」と困っている
アパート経営は、建てたあとも続く長い「事業」です。
そのことを理解せずに始めると、後悔するリスクが高まります。
✅ 建てる前に考えるべき5つの視点
1. 本当にその土地に“賃貸需要”があるか?
・周辺に大学や企業、病院など、継続的な入居ニーズがあるか?
・不動産ポータルサイトで近隣の空室状況や賃料相場をチェックしているか?
・似たような物件がすでに多く建っていないか?
👉 借り手がいなければ、どんなに立派なアパートでも収入は得られません。
2. 自己資金と借入のバランスは適正か?
・自己資金ゼロのフルローンになっていないか?
・1〜2か月空室になっただけで、返済が苦しくなる設計になっていないか?
・登記費用や火災保険などの初期費用も含めて資金計画が立てられているか?
👉 自己資金を少しでも入れておくと、月々の返済に余裕が生まれます。
3. 提案された「収支計画」は現実的か?
・空室率ゼロや家賃の下落なしなど、楽観的な前提になっていないか?
・固定資産税や修繕費、原状回復費、管理委託料など、実際に必要な支出がきちんと含まれているか?
・将来の家賃相場の変化や、設備交換のタイミングも見込まれているか?
👉 都合のいい数字だけを並べたシミュレーションは、信頼できません。
4. 将来の“出口”(売却・相続)をどう考えるか?
・築年数が経つほど、アパートの流動性は下がる
・借り手がいることで、売却の自由度も下がる
・相続した子どもが「引き継ぎたくない」と言えば、物件が重荷になることも
👉 建てたあとの“終わらせ方”まで想定しておく必要があります。
5. 相見積もり・第三者の意見を聞いたか?
・1社の提案だけで判断していないか?
・同じ条件で2〜3社から見積もりを取り、条件を比較したか?
・営業担当以外の専門家に意見を聞く機会をつくったか?
👉 提案を受けたら即決せず、比較・検討する時間を持ちましょう。
⚖ 法律・規制面の確認を忘れていないか?
アパート建築を検討する際、そもそもその土地に建てられるのかどうかを確認することが何より重要です。
・用途地域がアパート建築を許容する区分か?
・建ぺい率・容積率が計画している建物の規模を許しているか?
・接道義務(幅員4m以上の道路に2m以上接している)が満たされているか?
これらの条件を満たさない場合、「建てられない」「想定より小さな建物しか建てられない」などのトラブルに発展するおそれがあります。
👉 計画を進める前に、必ず自治体や建築士・不動産会社などの専門家に相談し、法的に問題がないかを確認しておきましょう。
🕰 提案を受けたら、すぐに決めなくていい
営業担当者から「今がチャンスです」「早く決めないと土地がもったいない」と急かされることもあります。
でも、焦る必要はまったくありません。
アパート経営は始めたら長く続くもの。
将来の生活設計や相続のことまで含めて、じっくり検討してから判断すべきです。
たとえば…
- 提案書を家で読み直す
- 家族と相談する
- 別の会社にも同じ条件で提案を求める
こうした一手間が、将来の後悔を防ぐことにつながります。
✍ まとめ
「アパートを建てませんか?」という提案に対して、返事をする前に確認しておきたいポイントは以下の5つです。
📌 賃貸需要があるエリアかどうか?
📌 自己資金と借入のバランスに無理はないか?
📌 提案された収支計画に「甘さ」がないか?
📌 将来的な売却や相続(出口)をどう考えているか?
📌 他社の提案や第三者の意見を確認したか?
📌 法律上、その土地に建築できるか確認したか?
アパート経営は、建てる前の準備と判断が何よりも重要です。
「今決めなくても大丈夫」。
そう思える冷静さを持って、じっくりと向き合ってみてください。
📚 次回は、第4回「確定申告、青色と白色って何が違うの?」をお届けします。
家賃収入があると避けて通れない“確定申告”。
「青色」と「白色」の違いや、どちらを選べばいいのか――
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