
「親の家、どうしようか。」
そんな話題が出たとき、まだ先のことだと思っていませんか?
でも実は、相続前に不動産を売却しておくという選択が、のちのち家族が慌てずに済むきっかけになることがあります。
親が元気なうちは「まだ早い」「縁起でもない」と感じるもの。
けれど、いざ相続が始まると、兄弟の同意や登記の問題で話が止まってしまうケースは少なくありません。
“誰が相続するのか”よりも、“どんな状態で引き継ぐのか”を決めておく方が、実はずっと大切なんです。
名義人(親)が生きていて判断できるうちに整理をしておくことで、トラブルを防ぎ、将来の選択肢も広がります。
今回は、そんな「相続前の不動産売却」を考えるうえでの判断のポイントを、登記・税金・家族の話し合いという3つの視点から整理してみます。
相続前に売るメリットは「シンプルに動けること」

結論から言うと、相続前のほうが段取りが早く、トラブルも少ないんです。
理由は、名義人(親)が生きていて、本人の意思で売却を決められるから。
💬「施設費を準備しておきたい」
💬「家を空ける時間が増えたから管理が大変」
──そんな時期に相談を受けることはよくあります。
相続前なら、通常の売買と同じ流れで進められます。
つまり「査定→媒介契約→販売→契約→決済」と、一人の判断で完結できる。
これが相続後になると、全員の同意・印鑑・書類の確認が必要になり、一気に時間がかかります。
さらに、親が判断できるうちに売却すれば、売却代金の使い道を自分で決められるという利点も。
介護費・施設費・老後資金として有効活用できるほか、「子どもに迷惑をかけない」という安心感も得られます。
| 💡【ポイント】 相続前の売却は「自分の意思で整理できる」最後のタイミング。 家族にとっても“準備のスタート”になります。 |
相続後の売却は“全員の同意”が必要になる

相続が始まると、不動産は“共有財産”になります。
つまり、相続人全員の同意がなければ売却できません。
👩「思い出があるから売りたくない」
👨「固定資産税が大変だから売りたい」
──この意見の食い違いが、一番多いトラブル。
しかも相続登記をしていない不動産は、原則として売却できません。
2024年4月からは相続登記が義務化され、相続後3年以内の登記申請が求められるようになりました。
もし登記をしないまま時間が経てば、書類の取得が難しくなり、売却どころか名義変更も止まります。
よくあるのが、
「親が亡くなって3年経ってしまい、戸籍をたどるのが大変になった」
というケース。
遅れるほど手間も費用も増えます。
| 💡【ワンポイント】 共有名義になる前=相続前に方向性を決めておくのが、最も現実的です。 |
遺産分割前でも「全員の同意」があれば売れる

「相続登記が終わっていなくても売れるの?」
実は、全員の同意と特約をつければ売却できる場合もあります。
たとえば、
🔸 相続登記完了後に名義を移す
🔸 登記費用は相続人が負担する
🔸 登記が遅れた場合の解除条件を決めておく
──こうした条件を契約書に記載すれば、買主も安心して契約できます。
このような契約を「特約付き売買契約」と呼びます。
ただし、注意したいのは税金の扱いです。
遺産分割前に売却した場合、売却益の申告は相続人全員で行う必要があります。
代表者ひとりがまとめて納税するのではなく、それぞれの持分に応じた申告が必要です。
さらに、売却代金の分配をめぐるトラブルも多く、
「兄が預かったまま分けてくれない…」
という相談も少なくありません。
| 💡【覚えておきたい】 特約は「リスクを小さくするための約束メモ」。 同意書と分配ルールをきちんと書面で残しておくことが、後々の安心につながります。 |
税金は「相続後3年以内の売却」で優遇される

税金の面では、相続後3年以内に売却したほうが有利になるケースがあります。
これは「取得費加算の特例」といって、相続税として支払った金額を売却時の経費に加算できる制度です。
📊 たとえば、相続税を300万円納めた人が3年以内に土地を売れば、その300万円を差し引いて税金を計算できます。
この特例を使えば、譲渡所得税(売却益にかかる税金)を大幅に抑えることができます。
また、「被相続人の居住用家屋を売ったときの3,000万円控除(空き家特例)」も併用できるケースがあります。
これは、被相続人が1人で住んでいた家を解体またはリフォームして売る場合、譲渡所得から3,000万円を控除できる制度です。
ただし、いずれも期限や条件が細かく定められています。
👉「相続から3年以内」かつ「相続税の申告が済んでいること」などが要件になります。
つまり、
・相続前に売る → 手続きがラクで早い
・相続後に売る → 節税効果が期待できる
どちらを選ぶかは、親の健康状態・相続人の人数・税金の額などによって変わります。
| 💡【目安】 「早く整理したい」なら相続前、「節税を重視」なら相続後3年以内の売却を検討しましょう。 |
まとめ:「早めの話し合い」がすべてを軽くする

相続の話は、どうしても後回しにしがち。
けれど、元気なうちに話すことが家族を守る最大の準備です。
👵「もっと早く話しておけばよかった」──そう後悔するケースは決して少なくありません。
話し合いといっても、最初から深刻である必要はありません。
「この家、将来どうしようか?」と軽く話題に出すだけでも十分。
一度話しておくと、家族の気持ちの方向性が見えてきます。
次にすることは3つだけです。
1️⃣ 家族で話す
2️⃣ 不動産会社に査定をとる
3️⃣ 税理士・司法書士に相談する
この3ステップで、頭の中のモヤモヤが整理されていきます。
また、親世代にとっても「自分の意思を伝えられた」という安心感になります。
| 💡【次の一歩】 相続の準備は“片付け”ではなく、“家族の未来設計”。 話すことから始めてみましょう。 |
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