
「賃貸経営は個人のままでいいの?」「法人化って節税になるって聞くけど、本当?」 そんな疑問をお持ちのオーナーさんも多いのではないでしょうか。
今回は、個人と法人、それぞれのメリット・デメリットを比較しながら、 「どんな人が法人化に向いているのか?」をざっくりわかりやすく解説していきます。
✅ そもそも「法人化」とは?
ここでいう「法人化」とは、アパートやマンションなどの賃貸経営を、 個人ではなく「法人(会社)」の名義で行うことです。
具体的には、株式会社や合同会社を設立して、 そこに不動産を移転(売却または出資)し、その法人が賃貸経営を行う形になります。
【イメージ】
- 個人経営:オーナー自身が大家さん → 自分の確定申告で処理
- 法人経営:設立した法人が大家さん → 法人の決算書と法人税申告
この法人を、家族や自分が役員として運営するのが一般的です。

✅ 法人化のメリット
① 節税につながる可能性がある
法人化の最大の魅力は「税率のコントロール」ができる点です。
- 個人の所得税率:最大45%(+住民税10%)→ 合計最大55%
- 法人税率:中小法人で約23%前後(利益800万円までは約15%)
たとえば、年間の所得(家賃収入−経費)が大きい場合、 個人で高い税率がかかってしまうよりも、法人化した方がトータルの納税額が抑えられることがあります。
さらに、法人に給与を支払う形にすれば、所得分散や社会保険の活用も可能です。
② 経費として認められる範囲が広がる
法人では、以下のような支出も経費にしやすくなります。
- 役員報酬や家族への給与
- 会議費(打ち合わせ時の飲食代)
- 法人名義での車両・スマホなどの維持費
ただし、「プライベート利用との区別が明確であること」が前提です。
③ 相続・事業承継がしやすい
法人にしておくことで、不動産そのものではなく 「法人の株式(持分)」を相続する形にでき、名義変更や分割がスムーズになります。
また、法人に蓄積した利益は、将来的に役員退職金などの形で受け取ることも可能です。

✅ 法人化のデメリット
① 設立や維持にコストがかかる
法人を設立するには、登録免許税や定款認証費用などが必要です。
【目安】
- 合同会社:約6万円~10万円
- 株式会社:約20万円前後
さらに、毎年の法人住民税(最低7万円~)や、税理士への申告依頼費用など、 個人よりもランニングコストがかかります。
② 融資や登記の手続きが複雑になる
不動産を法人名義にすると、金融機関の融資審査が厳しくなったり、 個人時代よりも登記・契約が煩雑になったりするケースがあります。
また、不動産を法人に移す際には「譲渡所得税」や「登録免許税」がかかることもあるため、 移転の方法については慎重な検討が必要です。
③ 節税効果がないケースも
利益が少ない、または赤字が出ているようなケースでは、 法人化のメリットが出ないどころか、 税理士費用や住民税で「かえって負担増」になることも。
あくまで「所得が一定以上ある場合」に初めて効果が出てくる選択肢です。

✅ 法人化に向いている人は?
- 賃貸収入からの年間所得が900万円以上ある(所得税率が高い)
- 将来的に子どもに事業を引き継ぎたいと考えている
- 複数の物件を所有・買い増し予定で事業的に拡大する意思がある
- 相続対策や所得分散を視野に入れたい
こうしたケースでは、法人化の検討価値は十分あります。

まとめ:「法人化=節税」ではないからこそ、冷静な判断を
最近は「法人化すればお得!」といった広告や営業トークも見かけますが、 実際には、所得・経費・資産・相続の状況などを総合的に見ないと判断できません。
法人化は、一度やると戻すのが難しく、 手続きや税務も一気に複雑になります。
だからこそ、
- 収益シミュレーション
- 相続計画
- 将来の運営方針 をふまえて、冷静に検討していくことが重要です。
💡 なお、法人化に伴う税務や手続きの詳細については、税理士など専門家にご相談ください。
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