
親から相続した家が空き家のままになっていませんか?
「もう使わないし、空き家を放棄したい」と思っても、実は空き家だけを放棄することはできません。
空き家を手放すには、「相続放棄」という手続きを取る必要がありますが、その後も一定の管理義務が残る場合があります。
さらに、最終的に国庫に帰属するまでには時間がかかります。
今回は「空き家を相続放棄したい」と考える方に向けて、放棄の仕組み・民法改正のポイント・現実的な対処法を、横浜の現場感も交えてわかりやすくまとめます。
「空き家を放棄したい」は本当にできる?

結論から言うと、空き家だけを放棄することはできません。
相続放棄は、「相続する人の地位」そのものを放棄する手続きであり、特定の財産だけを選んで手放すことはできないからです。
| 📦【ポイント】 相続放棄は、空き家だけでなく、預金や保険などもすべて放棄するか、すべて相続するかの二択。 |
たとえば「実家はいらないけど、預金は受け取りたい」という場合、残念ながらその選択はできません。
放棄とは“すべての権利と義務を放棄する”こと。
このため、空き家を手放すには、相続放棄+管理の引き継ぎという2段階が必要になります。

👩「家はいらないから相続放棄すれば終わり、ですよね?」
🦁「いいえ、実はそこからがスタートなんです。」
こうした誤解はとても多く、実際のご相談でもよくあるパターンです。
相続放棄しても管理義務が残る?民法改正のポイント

2023年の民法改正により、相続放棄のルールは大きく変わりました。
以前は放棄をすればその時点で義務が消えると考えられていましたが、放棄後も一定の管理義務が残ることが明記されました。
理由は、放置された空き家による近隣被害が社会問題化しているためです。
倒壊、火災、害獣被害──。
放棄した人にも「次の管理人に引き渡すまで」の責任が求められるようになりました。
| 📦【改正のポイント】 相続放棄をしても ➡ 「管理義務」は一時的に残ります。 ➡ ただし、空き家の「所有権」そのものは放棄によって消えます。 |
つまり、「空き家は、もう自分のものではないけれど、次の人に引き継ぐまでは責任がある」という状態になるわけです。
相続放棄した空き家はどうなる?最終的には国庫へ

では、相続人全員が放棄した場合、その空き家はどうなるのでしょうか?
結論は、最終的に国庫(国の財産)に帰属します。
ただし、「放棄した=すぐ国に引き取ってもらえる」わけではありません。
法務局による確認や、相続財産管理人の選任など、長い手続きを経てから国庫に移ります。

👨「放棄すれば国がすぐ処理してくれるんですよね?」
🦁「残念ながら“すぐ”ではないんです。」
この点も誤解されやすく、実際のご相談でもよく聞かれる質問のひとつです。
| 📦【注意点】 相続人がいない期間中も、管理責任や固定資産税が発生することがあります。 その間、自治体が代わりに草刈りや安全対策を行い、費用を請求されるケースも。 |
放棄しても“完全に手放せるまで時間がかかる”──これが現実です。
空き家を放棄したいときの現実的な選択肢

「放棄すればラクになれる」と思いがちですが、実際はそう簡単ではありません。
放棄ではなく、“整理・処分”を検討するほうが現実的です。
たとえば、
- 解体して更地にする
- 不動産会社に売却を依頼する
- 自治体・NPOへの寄付を検討する
など、動ける選択肢は意外に多いものです。
📊【比較表】
| 方法 | メリット | デメリット |
| 相続放棄 | 所有権を手放せる | 管理義務が一時的に残る・他財産も放棄 |
| 解体後売却 | 現金化・再利用が可能 | 解体費用が必要 |
| 寄付 | 公共利用につながる | 受け入れ先が少ない |

どの方法にも一長一短がありますが、「放棄」だけが正解ではありません。
現実には、「維持するか、手放すか」の間で悩まれる方が多いです。
👩「もう誰も住まないのに税金だけ払うなんて…」
🦁「そう感じたら、“放棄”より“整理”が先です。」
| 📦【ポイント】 相続放棄を選ぶ前に、解体費や売却見込みを確認することで、損を防げることもあります。 |
空き家の相続放棄手続きと流れ

「やはり放棄したい」という場合、手続きは「家庭裁判所での申述(しんじゅつ)」が必要です。
流れを簡単に整理すると以下のとおりです。
📦【手続きの流れ】
1️⃣ 被相続人の死亡を確認(戸籍収集)
2️⃣ 相続開始を知った日から3か月以内に申述書を提出
3️⃣ 裁判所の審査 → 受理決定
4️⃣ 相続放棄の証明書を取得
このとき注意すべきなのは、「家だけ放棄したい」という申し出は認められないという点です。
相続放棄は、不動産・預金・借金をすべてまとめて放棄する制度だからです。

👩「家は放棄したいけど、通帳はもらいたいんです」
🦁「残念ですが、相続放棄は“全部かゼロか”なんです。」
こうしたご相談は、実際の現場でも少なくありません。
まとめ:「放棄」より「相談」から始めよう

空き家の相続放棄は、思っている以上に複雑です。
放棄すれば終わりではなく、管理・税金・責任が一時的に続きます。
だからこそ、最初の一歩は“放棄の決断”ではなく、“相談”です。
| 📦【次の一歩】 ・空き家の現状を整理する(登記・固定資産税) ・相続放棄を考える前に、専門家に相談 ・「放棄したい」ではなく、「どう活かせるか」を考える |
「横浜でも空き家の相続相談が増えている」とよく耳にします。
身近な誰かに迷惑をかけたくない、そんな思いからの放棄も多いでしょう。
でも、話してみるだけでも解決の糸口が見えることは多いものです。

まずは、不動産会社や司法書士など専門家に一度相談してみましょう。
話してみることから、すべてが動き始めます。
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