
高額療養費制度を正しく使えば、医療費の自己負担は大きく抑えられます。
でも、制度をよく知らずに病院の請求通りに支払ってしまうと、損をすることも。
実際に私の家族も、退院時に7万5,000円の請求を受け、窓口で確認してもらったところ最終的には2万円ほどになりました。
このように、制度を理解していないと、本来支払わなくていい額まで請求されることがあります。
この記事では、高額療養費制度の基本と、実際に気をつけたい確認ポイント、マイナンバーとの関係、後からの返金申請までを具体的に解説します。
高額療養費制度とは?
📄 制度の基本
健康保険には、自己負担額が高額になったときに備えて「高額療養費制度」が用意されています。
これは、同じ月(1日から末日まで)に支払った医療費の自己負担が一定の上限額を超えた場合、その超過分が払い戻される仕組みです。
自己負担の上限額は収入によって異なり、例えば年収370万円から770万円程度の人であれば、1か月あたり約9万円前後に収まる計算になります。
また、70歳以上で一般的な収入区分に該当する場合は、通院のみなら月18,000円、通院と入院を合わせても月57,600円が上限となり、より負担が軽減される仕組みです。
✅ ポイント
入院や手術などで医療費が高額になっても、家計の負担が大きくなりすぎないように支援される制度です。
📌 自己負担限度額の決まり方
年齢(70歳未満、70歳以上)や所得によって自己負担限度額が異なります。
例:69歳以下で年収約370万〜770万円の人の場合 ↓ 自己負担限度額は「80,100円+(医療費−267,000円)×1%」 |
1ヶ月の医療費の自己負担上限額
区分 | 年収の目安 | 70歳未満 | 70歳以上 | |
現役並み | 約1,160万円から | 252,600円+(医療費-842,000円)×1%【4回目以降:140,100円】 | ||
約770万円から1,160万円 | 167,400円+(医療費-558,000円)×1%【4回目以降:93,000円】 | |||
約370万円から770万円 | 80,100円+(医療費-267,000円)×1%【4回目以降:44,400円】 | |||
一 般 | 約156万円から370万円 | 57,600円 【4回目以降:44,400円】 | 18,000円 【年間上限144,000円】 | 57,600円 【4回目以降:44,400円】 |
低所得者 ---------- (住民税非課税世帯) | 年金収入80万円以下など) | 35,400円 【4回目以降:24,600円】 | 8,000円 | 24,600円 ----------- 15,000円 |
※同じ医療機関での自己負担額(院外処方の費用を含む)が上限額に達していない場合でも、同じ月内でほかの医療機関の自己負担額と合算することができます(※70歳未満の場合は、1件あたり21,000円以上の自己負担があることが条件です)。合算した結果、自己負担額の合計が上限額を超えれば、高額療養費の支給対象となります。
👪 世帯合算のルール
同じ保険に加入している家族の医療費は、条件を満たせば合算して計算できます。
- 70歳未満:1つの医療機関ごとに、月21,000円以上の自己負担のみが合算対象
- 70歳以上:金額にかかわらず、すべての自己負担が合算の対象になります
❌ 対象外の費用に注意
高額療養費制度ではすべての医療費がカバーされるわけではありません。
例えば、差額ベッド代や入院時の食事代の一部負担、先進医療の技術料などはこの制度の対象外です。
こうした費用については、あらかじめ自己負担になることを理解しておきましょう。
🔄 多数回該当の仕組み
高額療養費制度には「多数回該当」という仕組みがあります。
これは、過去12か月以内に自己負担限度額に達した月が3回あると、4回目以降の限度額が引き下げられる制度です。
例えば、69歳以下で年収が370万〜770万円の方の場合、4回目からの自己負担限度額は約44,000円に下がります。
繰り返し医療費がかかる人にとっては、大きな負担軽減につながります。
📝 申請の流れ
医療費はまず通常通り窓口で支払います。
その月の自己負担が限度額を超えた場合、あとから申請することで超過分が払い戻されます。
📄 申請方法
加入している健康保険(協会けんぽ、国民健康保険、組合健保など)に申請します。
提出書類や手続きの詳細は保険者によって異なるため、事前の確認が必要です。
🪪 限度額適用認定証とマイナンバーの活用
「限度額適用認定証」を事前に取得し、医療機関に提示すれば、窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えることができます。
また、マイナンバーを保険証として登録している場合は、認定証がなくても自動的に制度が適用される仕組みになっているため、特に便利です。
ただし、医療機関によっては対応状況が異なる場合もあるので、事前に確認しておくと安心です。

「あれ?おかしくない?」と思ったら即確認!
先日、私の高齢の母が圧迫骨折し、1ヶ月間のリハビリ入院を余儀なくされました。
母は低所得者であり、高額療養費制度を利用すれば1ヶ月の医療費は最大で15,000円の自己負担で済むはずでした。
しかし、退院時に渡された請求書を見ると、約75,000円の請求になっていました。
私はすぐに窓口で「これは高額療養費制度を適用した金額ですか?」と確認しました。
すると、「限度額認定証はお持ちですか?」との返答。
「他の病院では窓口で確認してくれました」と伝えたところ、職員が再計算を開始してくれました。
マイナンバーカードを保険証として登録していたため、他の病院では自動的に制度が適用されていたのです。
その結果、最終的な請求額は20,000円ほどになりました。
ここで大切なのは、「病院の請求だからといって、そのまま鵜呑みにしないこと」です。
制度の適用には一定の手続きや確認が必要なため、状況によっては反映がされていないこともあります。
念のために窓口で確認することで、本来払わなくてよい費用を避けられることがあります。
マイナンバーを登録していれば限度額認定証は不要
最近では、マイナンバーを健康保険証として登録している場合、限度額認定証を持参しなくても自動的に適用されるようになっています。
ただし、病院によっては対応が遅れている場合もあるため、事前に確認しておくと安心です。
私の母のケースでも、窓口で確認をお願いしなかったら本来よりも高額な請求を支払うところでした。
高額療養費制度を活用するための3つのポイント
- 「限度額認定証」またはマイナンバーの健康保険証登録を事前に確認
事前に登録しておけば、窓口での計算がスムーズに進み、余計な支払いを避けられます。 - 請求額が予想よりも高い場合は、すぐに窓口に確認する
「病院側が計算を間違えることはない」と思い込まず、「念のため」の気持ちで確認してみましょう。
思わぬ差額が出ることもあります。 - 健康保険の仕組みを理解し、適正な負担額を把握しておく
自分の所得区分による負担額を知っておくと、請求額に違和感を持った際にすぐに判断できます。
支払ってしまった場合でも返金は可能
もし高額療養費制度を知らずに医療費をそのまま全額支払ってしまった場合でも、後から申請すれば差額分は返金されます。
ただし、自動的に返ってくるわけではありません。
以下のような手続きが必要です。
- 加入している健康保険組合または協会けんぽに「高額療養費支給申請書」を提出する
- 領収書や明細書が必要になるため、必ず保管しておく
- 払い戻しには2~3ヶ月ほどかかることがある
健康保険によっては申請書を送ってくれる場合もありますが、自分から確認して申請する方が確実です。
まとめ
高額療養費制度は、正しく使えば医療費の負担を大幅に軽減できる素晴らしい制度です。
しかし、実際に利用する際には「知らなかった」「確認を忘れた」という小さなミスが、大きな金銭的負担につながることもあります。
特に、マイナンバーの健康保険証登録が進んでいる現在は、限度額認定証なしで自動的に適用されるケースも増えています。
とはいえ、病院ごとに対応が異なる可能性があるため、事前に確認しておくことが大切です。
また、もし制度を知らずに全額支払ってしまったとしても、あきらめずに申請すれば返金されます。
ただし、申請には手間と時間がかかり、払い戻しまでに2〜3ヶ月ほどかかることもあるため、できるだけ事前に制度を活用する準備をしておくことが望ましいです。
医療費で損をしないためにも、制度の仕組みを知っておくことが本当に重要です。
今回の私の経験が、少しでも皆さんの参考になれば幸いです。
高額な医療費を請求されたときは、一度立ち止まって確認してみることをおすすめします。
安心して治療に専念できるよう、しっかりと対策をしていきましょう!
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