
親が認知症になったり判断力が衰えてきたとき、
「親名義の家を売りたいのに、本人の同意がとれない」
というご相談が非常に増えています。
こうした場合に利用されるのが成年後見制度ですが、家を売るには後見人だけでは決められず、家庭裁判所の「不動産売却許可」が必ず必要になります。
しかも、許可の基準や必要書類、売却までの期間は一般の売却とはまったく異なるため、流れを知らずに動くとトラブルになる例も少なくありません。
この記事では、成年後見で親の家を売る際の流れ、期間、必要書類、許可される条件、そしてよくあるトラブルまで、実例を交えながら分かりやすく整理します。
成年後見で不動産を売るときは「家庭裁判所の許可」が絶対に必要

結論から言うと、成年後見で不動産を売る場合、後見人が勝手に売ることはできません。
必ず家庭裁判所の「不動産売却許可」が必要で、これがない売却契約は無効です。
| 📦【なぜ許可が必要?】 後見制度は「本人(被後見人)の財産を守るため」の制度。 不動産は大きな財産のため、後見人の判断だけではリスクが大きいとされ、裁判所が妥当性をチェックします。 |
たとえば、
・施設入居費を確保するため
・固定資産税負担が続き、維持できないため
・空き家になり傷む前に売却するため
など、本人の利益になるかどうかが判断基準です。

👩「親が住まなくなったから売るだけなのに…」
🦁「制度上、本当に売却が必要かの説明が求められるんです。」
つまり、売却許可=親のための正当性を証明するステップ。
これを理解しておくと、必要な資料の準備もスムーズです。
売却許可がおりる理由・おりない理由

結論から言うと、家庭裁判所が許可を出すのは、本人の利益が明確なときだけです。
成年後見は財産保護の制度のため、「相続のため」「家族の都合」では許可されません。
| 📦【許可されやすいケース】 ・介護施設への入居費を確保するため ・長年空き家で管理ができず、倒壊リスクがある ・固定資産税や維持費が本人の負担になっている ・売却しないと生活費が足りない |
これらは「本人の生活と安全のため」という合理性があるため認められやすいです。
一方、
・家族が売りたいだけ
・相続対策として売っておきたい
・兄弟で分けやすくするため
といった理由は、本人の利益とは言えないため許可されません。

👨「相続が大変だから売っておきたいんです」
🦁「裁判所は本人のためかどうかしか見ないんです。」
つまり、許可の可否は「本人にとって必要か?」の一点で決まります。
成年後見人による不動産売却の流れと期間

不動産売却の流れは一般の売却と大きく異なり、家庭裁判所の手続きが中心になります。
📦【売却の流れ(概要)】
1️⃣ 不動産会社による査定
2️⃣ 売却の必要性を整理(費用・生活状況)
3️⃣ 家庭裁判所へ「不動産売却許可申立て」
4️⃣ 裁判所の調査(事情聴取・書類確認)
5️⃣ 許可決定
6️⃣ 売買契約
7️⃣ 決済・引き渡し
一般の売却との差は、③〜⑤の手続きです。
期間は、
・申立てから許可まで → 1〜3か月程度
・売却完了まで → 4〜6か月以上になることもあります。
📦【期間が延びる理由】
・書類の不足
・査定価格の妥当性判断
・親の生活状況の追加確認
など。

👩「半年もかかるなんて知らなかった…」
🦁「後見人の売却は、説明書類の精度でスピードが変わります。」
つまり、早めの準備が最短ルートです。
居住用以外の不動産は売却が難しい?

結論から言うと、居住用(自宅)以外の不動産は、売却許可のハードルが上がります。
居住用の家は、
・施設入居のため
・生活費の確保
など、直接的に必要性が高いことが多く、裁判所も許可を出しやすい傾向があります。
ところが、
・駐車場
・賃貸物件
・別荘
などの「居住用以外」の不動産は、
「売らなくても維持できるのでは?」
「賃料収入があるなら売らないほうが有利では?」
と判断され、慎重になります。
| 📦【許可が出る例】 ・維持費や固定資産税が本人の負担になっている ・空き地が荒れて近隣に迷惑が出ている ・収益が出ず赤字が続いている |

👨「もう使ってない土地だから売りたいんですが…」
🦁「本人の迷惑になっている証拠があると許可されやすくなります。」
つまり、居住用以外は、維持困難の裏付けが鍵になります。

売却時の必要書類と登記のポイント

後見人による不動産売却では、必要書類が非常に多く準備できずに遅れるケースが多いです。
| 📦【主な必要書類】 ・後見人の登記事項証明書 ・不動産登記簿謄本 ・査定書(複数社あると良い) ・売却理由書 ・収支見込み表 ・本人の資産一覧 ・本人の生活状況説明書 ・見積書(解体や修繕が必要な場合) |
裁判所は、「本当にその価格で妥当か」「他に選べる方法はないか」をチェックします。
そのため、1社の査定だけでは不十分とされ、複数査定を求められることも珍しくありません。
売却後の登記も、
所有者欄に“後見人○○が代理して売却”と記載される特別な形式になります。

👩「こんなに書類が必要なんて知らなかった…」
🦁「書類戦になるので、早めの準備が結果的に近道です。」
つまり、書類の精度が売却許可の可否を左右します。
成年後見で起こりやすいトラブルと回避方法

後見人の不動産売却は、トラブルが起きやすい手続きです。
| 📦【よくあるトラブル】 ・家族が売却に反対 ・査定額が安いと言われる ・兄弟間で意見が分かれる ・裁判所に却下される ・契約後に「許可が無効」と言われる ・後見人の判断ミスと指摘される |
特に多いのが「価格が安い問題」。
裁判所は、市場相場より著しく低い価格には許可を出しません。
そのため、安すぎる価格での買取や急ぎの売却は注意が必要です。

👨「兄弟が急いで売ってと言うんですが…」
🦁「裁判所は家族の意向ではなく、本人の利益しか見ません。」
📦【トラブル回避のコツ】
・早めに専門家へ相談する
・査定は複数取る
・売却理由を詳細に作成する
・家族間で情報を共有する
つまり、スピード優先の売却とは相性が悪い手続きです。
報酬や費用はどのくらい?

成年後見人が不動産売却を行う場合、後見人の報酬や手続き費用がかかります。
| 📦【報酬の目安】 ・後見人の報酬:月2〜6万円が一般的 ・売却許可申立ての追加報酬:5〜20万円程度 (※案件の複雑さにより変動) |
また、家庭裁判所への申立て時には、
・収入印紙
・郵便切手
・登記事項証明書の取得費
などの諸費用として5,000円〜1万円程度が必要です。

💬「後見人って売却のたびに追加報酬がいるんですか?」
🦁「通常の後見業務を超える作業だからという扱いになります。」
売却手続き全体として見ると、
・後見人報酬
・司法書士費用
・不動産売却時の仲介手数料
など、一般の売却より費用構造が複雑です。
つまり、売却前に費用の見積りを必ず取ることが重要です。

まとめ:後見の売却は「早めの準備」がすべてを軽くする

成年後見での不動産売却は、一般の売却と比べて手続きも期間もハードルも高く、想像以上に時間がかかるものです。
しかし、本人の生活を守るための制度でもあるため、正しく手続きすれば必ず前に進みます。
| 📦【この記事のまとめ】 ・成年後見の売却は 家庭裁判所の許可が絶対 ・売却の必要性は 本人の利益が基準 ・期間は4〜6か月以上かかる ・書類準備が許可のカギ ・トラブルは事前対応で回避できる |

👩「どこから手をつけるべきかわからなくて…」
🦁「最初は必要性の整理から始めるのが一番ラクですよ。」
後見の売却は、焦って決めるほど停滞します。
まずは、専門家(司法書士・不動産会社・弁護士)に状況だけ相談してみてください。
その一歩が、家族の負担を大きく減らすきっかけになります。
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