
空き家を所有している皆さま、「しばらく使わないから…」と放置していませんか?
あるいは「実家を相続したけど、どう活用していいか分からない」というまま、放置状態になっていませんか?
そんな空き家の“放置”が、今後は大きなリスクになる可能性があります。
というのも、2023年の法改正で「管理不全空き家」という新たな区分が創設され、今までよりも早い段階で行政の関与や税金の増額が行われるようになったからです。
今回は、管理不全空き家の制度内容・固定資産税への影響・横浜市の動きについて、分かりやすく解説します。

管理不全空き家とは?【新制度のポイント】
👉 管理不全空き家の定義
「管理不全空き家」とは、文字通り適切な管理がなされず、周辺環境に悪影響を及ぼし始めている空き家を指します。具体的には、以下のような状態の空き家が該当する可能性があります。

⚠ 外壁や屋根が破損し、崩れる可能性がある
⚠ 敷地内に草木が生い茂り、蚊や害虫の温床になっている
⚠ 郵便ポストにチラシや郵便物が大量に溜まっている
⚠ 建物の劣化が著しく、近隣から苦情が来ている
これまで行政が介入できたのは、「特定空き家」と呼ばれる、倒壊や著しい景観悪化など明確に“危険”な状態の空き家だけでした。
しかし、新制度ではその手前の段階、「まだ危険まではいかないものの、既に放置状態が進んでおり、将来的に特定空き家となる可能性が高い空き家」にも、行政が指導・勧告を行えるようになりました。
つまり、放置し始めた初期段階で“管理不全空き家”と判断される可能性があるということです。
これにより、問題が深刻化する前に、所有者に対して早期の対応を促すことが可能になりました。
なぜ制度が変わったの?【背景と狙い】

近年、空き家の増加が深刻な社会問題となっており、
全国で900万戸を超える空き家が存在しています(総務省・2023年住宅・土地統計調査)。
特に問題なのは、「まだ使えるが、誰も管理せず放置されている」空き家です。
こうした住宅は、以下のような複数の社会的課題を引き起こします。
- 災害リスクの増大 : 地震や台風などの自然災害によって、外壁の崩落や建物の倒壊が発生し、通行人や近隣住民に危害が及ぶリスクがあります。
- 治安の悪化 : 不法侵入や放火の対象となりやすく、犯罪の温床になる可能性があります。地域の治安を悪化させる要因ともなりかねません。
- 生活環境の悪化 : 敷地内の雑草が伸び放題になったり、ごみが不法投棄されたりすることで、悪臭や害虫(蚊、ゴキブリ、ネズミなど)が発生し、近隣住民の生活環境を著しく損ないます。景観悪化も大きな問題です。
- 近隣トラブルの誘発 : 上記のような問題から、近隣住民との間でトラブルが発生し、地域コミュニティ全体の活性化を妨げる要因にもなります。
👉 そのため国は、放置を未然に防ぐ制度として、早い段階での是正を可能にする「管理不全空き家」制度を導入しました。
このような背景から、国は、問題が深刻化する前に放置状態を未然に防ぎ、早い段階での是正を可能にするため、「管理不全空き家」制度を導入しました。
この制度により、行政は「倒壊してからでは遅い」ではなく、「倒壊する前に注意喚起・対策を促す」ことができるようになったのです。これは、所有者に対しても、早期の対策を促し、将来的な大きな負担を回避させるための措置でもあります。
管理不全空き家に認定されるとどうなる?【税金・行政のリスク】
「管理不全空き家」に認定され、行政から「勧告」を受けると、所有者には以下のような大きなリスクが生じます。
🆙 固定資産税が最大6倍になる可能性
これまで空き家が建っている土地には、「住宅用地特例」という固定資産税の軽減措置が適用されていました。これは、土地の固定資産税が最大で1/6に減額されるという優遇措置です。しかし、「管理不全空き家」として行政から“勧告”を受けると、この住宅用地特例が解除される可能性があります。
📉 特例解除による影響
- 固定資産税が大幅に増額:
例えば、年間10万円 → 最大60万円程度まで増額されるケースもあり、家計への大きな負担になります。 - 突然の税額変更:
放置していると、ある日突然増税の通知が届くこともあります。
「住んでいないのに、所有しているだけで毎年60万円」という状況は、空き家が資産から負債へと変わることを意味します。
📢 行政からの指導・勧告・命令
管理不全空き家の状態が改善されない場合、行政は段階的に所有者への対応を強化していきます。
- 指導:
まずは、空き家の状況改善を促す「指導」が行われます。 - 勧告:
指導に従わず改善が見られない場合、次に「勧告」が出されます。
この段階で、住宅用地特例の解除が適用される可能性があります。 - 命令:
勧告にも従わない場合、行政は「命令」を出します。
この命令には罰則が科される場合もあります。 - 代執行(行政による解体):
最終的に命令にも従わず、改善がなされない場合、行政が強制的に建物を解体・撤去する「代執行」に至ります。
👉 代執行にかかる費用は、原則として所有者が負担することになります。解体費用は数百万円に上ることも珍しくなく、さらにその後の土地の活用について考えなければなりません。このように、「いつかやろう」と先延ばしにしていると、多額の税金や罰則、さらには高額な解体費用といった“負債”を抱えるリスクが高くなることを、ぜひ知っておいてください。

横浜市の空き家対策はどうなっている?
空き家問題は全国的な課題ですが、特に大都市圏である横浜市においても深刻化しています。横浜市は国の制度改正に呼応し、2024年3月に「空家等対策計画」を改定し、空き家対策をさらに強化しています。
横浜市の主な取り組みは以下の通りです。
空き家の状態調査・管理状況の把握🔍
市職員や委託業者が定期的に空き家の外観調査などを行い、管理状況を把握しています。これにより、管理不全の兆候がある物件を早期に発見し、対応につなげます。
管理不全の兆候がある物件の所有者への通知・助言📢
調査の結果、管理不全の兆候が見られる空き家の所有者に対しては、速やかに改善を促す通知や助言を行います。
空き家の活用に関する支援🤝
空き家の有効活用を促進するため、専門家による無料相談窓口の整備や、NPO法人などの支援法人との連携を強化しています。賃貸や売却、リノベーションなど、様々な活用方法に関する情報提供やマッチング支援が行われます。
補助金制度の拡充💰
空き家の撤去(解体)費用、改修費用、活用にかかる費用の一部を助成する補助金制度を設けています。これにより、所有者の経済的負担を軽減し、対策を促します。



横浜市では、これらの取り組みを通じて、空き家を「負」の遺産ではなく、地域資源として有効活用し、安全で安心なまちづくりを目指しています。具体的な対策方針や空き家への対応事例は、横浜市公式ウェブサイトの「空家等対策計画」で詳細に紹介されています。
「もしかしてウチも?」と思ったら…セルフチェック!
ご自身の所有する空き家が「管理不全空き家」に該当する可能性があるか、以下のチェックポイントで確認してみましょう。一つでも当てはまる項目があれば、早めに対策を検討することをおすすめします。
📌チェックポイント📌 |
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🔲 敷地内の雑草が1m以上に伸びている、または木々が繁茂し、隣地にはみ出している |
🔲 建物の外壁や屋根に破損・ひび割れがある |
🔲 郵便受けがチラシであふれかえっている |
🔲 近所から「見た目が悪い」「虫が湧いている」と言われた |
🔲 親から相続した家を数年以上放置している |
🔲 住所や所有者が登記簿上と異なっている(相続後、名義変更をしていないなど) |
これらのチェック項目は、行政が管理不全空き家と判断する際の目安となるものです。「いつかやろう」と先延ばしにしていると、前述の通り、税金・罰則・解体費用などの“負債”に直結するリスクが現実のものとなる可能性が高くなります。早期の対応が、将来的な負担を減らす鍵となります。
空き家の管理・活用に役立つサービスとは?
「何をどうすればいいのか分からない」「遠方に住んでいてなかなか管理できない」という方のために、空き家対策に役立つサービスをいくつかご紹介します。これらのサービスを賢く利用することで、空き家問題を解決し、新たな価値を生み出すことも可能です。
🛎️ 空き家管理サービス(月額制)🛎️
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プロの業者に管理を依頼することで、遠方に住んでいても空き家を良好な状態に保つことができます。
✅ 月1回〜の定期巡回: 専門スタッフが定期的に空き家を訪問し、状態を確認します。
✅ 外観・敷地・ポストのチェック: 建物の破損状況、敷地の雑草の有無、郵便ポストの状況などを細かくチェックし、報告書を提出します。
✅ 換気や清掃、草刈りなどを代行: 室内換気、簡易清掃、庭の草刈りなど、日常的な管理業務を代行してくれます。
✅ 不審者対策、トラブル対応: 不法侵入の兆候がないか確認したり、近隣からの苦情があった際の一次対応を行ったりすることもあります。
👉 これらのサービスを利用することで、空き家が荒れて特定空き家や管理不全空き家に指定されるリスクを軽減し、近隣住民とのトラブル防止にもつながります。
💡 空き家の活用提案 💡

空き家を負債にしないためには、その活用方法を検討することが重要です。専門家は、所有者の状況や空き家の特性に応じた様々な活用方法を提案してくれます。
✅ 中古住宅としての売却や賃貸化: リフォームやリノベーションを施して、中古住宅として売却したり、賃貸物件として活用したりする方法です。不動産市場の動向を踏まえ、最適な売却・賃貸戦略を提案してくれます。
✅ リノベーションによる価値再生: 古い空き家でも、現代のニーズに合わせたリノベーションを行うことで、新たな価値を生み出すことができます。デザイン性の高い住まいや、特定のターゲット層に合わせた物件として再生し、高値での売却や賃貸を目指します。
✅ 「空き家バンク」や0円物件サイトへの掲載: 自治体などが運営する「空き家バンク」や、近年注目されている「0円物件サイト」に登録し、空き家を探している人に情報を提供する方法です。地域貢献にもつながります。
✅ シェアハウス、民泊、テレワーク用物件としての再活用: 若者向けのシェアハウス、観光客向けの民泊施設、あるいは企業のサテライトオフィスやテレワークスペースとしての活用など、多様なニーズに応じた活用方法を検討します。
✅ 土地としての有効活用: 建物が老朽化している場合は、解体して駐車場や資材置き場、あるいは新たな建物の建築用地として活用する方法も考えられます。
👉 「売れない」「使えない」と思っていた空き家も、プロの視点で再評価すれば、意外な価値が見つかることもあります。専門家との相談を通じて、ご自身の空き家に最適な活用方法を見つけましょう。
まとめ
今回の法改正と横浜市の取り組みからわかるように、空き家はもはや「放っておいても大丈夫」な時代ではありません。
特に「管理不全空き家」に指定されると、固定資産税が最大6倍になるなど、経済的な負担が大きく増す可能性があります。
もしご自身の空き家が「管理不全空き家」に該当するかもしれないと感じたら、早期の対策が肝心です。横浜市でも相談窓口や支援制度を設けていますので、まずは専門家への相談を検討してみてはいかがでしょうか。適切な管理や活用で、空き家が再び価値ある資産となるよう、今すぐ行動を起こしましょう。
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