総分譲戸数1,000区画以上ありそうな大規模分譲地内の1画地の土地売却をご依頼いただきました。
調査をすると色々と当時の問題が・・・
長男が生まれて将来のために買った土地
横浜市南区のベッドタウンに将来家を建てようと購入した土地だったそうです。
昭和42年に大規模な分譲地の一角として売りに出されていました。
一団の分譲地ですが、数社での開発分譲のようです。
売却依頼を受けたので、調査を始めると土地の前面道路が私道であることがわかりました。
分譲地でも私道というのはよくあることです。
ところが・・・
私道の寄付(公道移管)
同じ分譲地内なのに、依頼を受けた土地の前面道路1本だけが私道になっているのが見つかりました。
その他は横浜市の市道でいわゆる公道です。
何故なのか調べてみると
当時の横浜の開発会社(不動産会社)が横浜市より道路の位置の指定を受けて建築基準法による道路認定を受けていました。
ですので、当然ながらその道路に問題なく接している土地に建物を建てることは出来ます。
但し、私道だと維持管理は私道の所有者の負担となり、上水道・下水道・ガス配管工事などの際も私道所有者から承諾をもらわないとならなくなり面倒です。
昭和42年の分譲から20年後の昭和62年に私道に接している所有者が集まり
有志にて道路環境推進のため横浜市に私道の寄付(公道移管)をしようとしました。
分譲時に公道にしてくれれば何の問題もなかったのに・・・・
私道を寄付して公道にするには、実は多大な費用と時間が掛かります。
横浜市では私道寄付にあたり、費用の助成金がありますが、全額助成してくれる訳ではないので私道の所有者(地権者)の負担があります。
そして、必ず公道に移管できる訳でもありません。
道路移管が完了してから助成金の対象となりますので、
道路移管できなければ、地権者の全額負担となって、しかも私道のままの状態になります。
まさに、その事態が起きてしまった。
平成が過ぎて令和になった今も、私道のままで
しかも、今回の売却依頼主が当時の道路環境推進のために動いた有志の一人でした。
私道所有者の中には、公道移管できずに費用負担させられたと今でも根に持っている所有者もいました。
どちらも悪くないのですが・・・困った事態です。
土地売却の際に売主は私道部分の通行・掘削の承諾書を私道所有者から取得して買主に引渡さなければ買主に迷惑が掛かります
実際には不動産会社の担当が頭を下げて私道所有者から承諾書をもらいます。
15人の地権者のうち1名がどうしても承諾書を提出してくれませんでしたが
水道局も認めてくれたので、水道埋設管の入れ替えができて土地分譲から50年後に新築住宅の建設がはじまりました。
横浜市の公道移管のメリット・デメリット
メリット
①道路補修の維持管理、上水道下水道の経時的負担の解消
②下水道の水洗化による衛生的環境
③道路占有物の撤去による災害時の安心
④所有財産価値アップ
デメリット
①私道所有者の負担金が発生する
公道移管できなくなる例
①移管する私道の相続登記ができない
②移管する私道に抵当権が設定されていて解除できない
③私道隣接地権者と境界の確認ができない
④複数の私道地権者の同意が得られない
⑤私道内の工作物が撤去できない
⑥公道に接続できない
横浜市助成金対象にならない業務
①寄付対象外の測量
②地積更正、地目変更
③相続登記、抵当権抹消登記費用
④法人所有の私道
※横浜市の助成による私有道路移管について
一般社団法人 神奈川県測量設計業協会横浜支部より抜粋
まとめ
今回の売主様は分譲時の土地を購入されてから50余年放置していたという珍しいケースで、売却依頼は息子さんからでした。
自分が生まれた時に父親が購入した土地なので感慨深いものがあったようです。
土地売却の際は境界確認と測量を行うので、弊社指定の測量会社に測量してもらったところ意外なことがわかりました。
私道入り口の隅切り部分が既定の長さになっていませんでした
分譲時に道路位置指定(建築基準法第42条1項5号道路)に横浜市より認定されていますので、今から覆ることはありませんが、当時の開発工事や測量の誤差によるものと思われます。
更に、隣地土地境界も両隣ともに数センチずれていることも判明
後日、両隣の所有者の方と覚書を交わして工事の際に直すことになりました。
私道の入り口からずれているので、直せなかったのかもしれません。
これらの事が昭和62年に私道を公道移管できなかった理由なのでしょう。
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■売却事例
所在:横浜市南区永田山王台
交通:京浜急行「弘明寺」駅徒歩15分
土地面積:85㎡(約25坪)
用途地域:第1種低層住居地域
建蔽率:50% 容積率:100%
土地権利:所有権
接道:4.5M 私道