借地権付き店舗

意外と事例が少ない借地権の売却についてです

借地権という権利はうまく活用すればメリットもたくさんありますが、地主とのトラブルは避けたいものです。

借地権とは土地を借りて建物を建てられる権利

ここで言う借地権とは旧法の借地権です。

実際に売買されるのはほとんどが旧法の借地権で、新法の借地権売買は非常に少ないので、対象にしていません。

借地権は特殊なので、取り扱いがない不動産会社もありますので、ある程度の知識と経験がないと建替えや売却がスムーズにはいかないので注意が必要です。

借地権者は昭和初期から昭和30年年代に土地を所有していない方が、土地持ちの地主さんから土地を借りて自分の家を建てたことをきっかけに借地権を持っている方が大半です。

しかし、自宅を建てる目的ではなく商売のための店舗であったり、家賃収入を得る目的のアパートであったり、借地の使用目的はいろいろですが、実は借地権には制限があるのです。

借地の制限とは

借地は、土地を借りたら何をしてもいいわけではありません。

まず、建物を建てる目的でなくては借地借家法の適用になりませんので、法律に保護されませんので、土地を借りて青空駐車場に利用してはならないし、借地権解除の事由になります。

また、非堅固な建物を建てる目的の借地契約なら、木造か軽量鉄骨(鉄骨が6ミリ以下)などとなります。

これを勝手に重量鉄骨やコンクリート住宅を建てると契約違反になります。

また、居住用とあるのに店舗や事務所利用のための建物も不可です。

ところがいざ契約書を確認すると、明らかに以前より店舗として使われているのに、契約書には居住用以外にしてはならないと記述してあったり、土地賃貸借契約書と実際が合ってないことも多々あります。

これは、土地賃貸借契約書を作成する際に、当人同士で簡単に文房具やさんに売っている契約書のひな型を使っているために起こるミスです。

不動産会社などが作成していないので、契約内容が正確ではないことで起きる問題です。

地主の承諾なく勝手に建替えるのもNGですし、建て替える資金を銀行から借りるのにも、銀行は建物にしか担保(抵当)をつけられないので、地主から承諾書をかならずもらいます。土地に担保(抵当)は付けられません。

地主と借地人のトラブル増加

地主も借地人も世代交代がはじまり、当初の契約者は亡くなり相続になると、2代目以降はあまり借地のことを理解してないことが多いですね。

そして、相談に来られる方は、必ずと言っていいほど地主借地人間で揉めてます。

揉めている内容が当人のことではなく、先代同士のいざこざが多いのです。自分の親が相手の親にこんなことをされたとか、現在の当事者ではなく、先代同士の揉め事で根に持っていることが多いです。

さらに契約書の内容と実際が違っているので、さらにトラブルに発展します。

そのほかにも、地代の増減に関することや更新料の値段が高いとか、相続による契約内容の変更などなど、売却する前から問題山済みです。

店舗付きアパートの売却

今回の借地権もまさに問題山済みでした。

借地権は自宅ではなく、店舗営業のために借りた土地でした。

現在の借地人の祖母が当初土地を借りて、相続になり祖母から母へ、そして現在の借地人と3代に亘って借地してます。

建物は当初のままなので築60年を過ぎてますが、途中で修繕を行っているので外観の見た目にはわかりませんが、相当ガタきてます。

2階のアパートが空室なので、水平器で測るとかなり歪んでいて、ふつうなら目まいがするほどですが、窓が塞がれているので傾いていることが分かりずらくなってます。

基礎も地盤沈下してきているので、早めに解体したほうが良さそうですが、借地なので解体して更地で放っておくことができないので、暫くこのままにしておくしか方法がありません。

売るにしても、建替えるにしても地主の承諾が必要です。

更に私が相談を受けるほんの数か月前に地代の値上げがあり、借地人が承諾してしまってました。

更新時期でもないのに前触れもなく地主から手紙1枚で値上げ請求してきて、ご丁寧に借地人は手紙で承諾してました。

承諾するまえに相談ほしかったですね。ハッキリ言って地代が高いので売却には不利です。

こんな感じの借地人ですから、かなり疎いです。

2年後に更新がありますが、現在の土地賃貸借契約書に特記事項があり、「使用目的を居住用に限る」とあります。

立地はアーケードのある古びた活気のない商店街で、新築時から店舗兼住居だったのにです。

この賃貸借契約書は印字されているので地主によってパソコンで作成されているわけです。

その前の土地賃貸借契約書を見ると、そんな特約は記載されていませんし、文房具屋で売っているようなひな型の契約書です。

あきらかに地主の悪意を感じますね。

弁護士に確認すると、最終の契約書が有効だそうです。

借地人から委任をもらって地主との初交渉でしたが、今回の地主さん中々したたかです。

めんどくさがって時間を作ってもらえませんし、ご自分の都合の良いことしか言いません。

「建物解体して更地で返してくれればいいよー」ですって。

借地を更地にして返却する人など聞いたこともありませんが、地主いわく皆さんそうするそうです。

この先が思いやられます。

結論から言うと、弁護士を介入させることになりましたが、相手弁護士のひどいのに驚きました。

弁護士なのに、整合性など無いと言い張る始末ですし、結局裁判所に売却許可をもらいましたが、売却価格も下がりました。

地主も借地人もどちらも得しませんが、根本にあるのは先代の恨み妬みのようなので、どうにもしようがありませんよね。

次の借地人は地代と更新料の値下げ交渉も残ったままです。

裁判所の許可で売ることも建て替えることも可能かもしれませんが、地主の承諾書がないと銀行から住宅ローン借りられませんので、借地人にとっては不利です。

地代の不払いは借地権解約理由になりますが、更新料不払いは即座に解約理由になりません、しかし後々の地主との関係性が悪くなり不利になることもあります。